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ペーパー取引、いきます!

塩漬け名人のセンパイに従います
ペーパー取引で金ミニ取引の練習をすることに決めたユミちゃん。ちょっぴり気合いが入り過ぎってカンジもするけれど、先物取引のキホン、押さえるところは押さえたってところかな。アタシやりますって、やる気まんまん宣言をしているけれど、一番大事なコト、そう、取引を買いから始めるのかそれとも売りから始めるのか、そこんところはどうなっているのさ。本来ならば世界ケーザイのファンダメンタルズや政治動向、地政学リスクなんかを読みまくりの、チャートを分析しまくりで、熟慮に熟慮を重ねて決定するのが正しい商品トレーダーのあるべき姿なんだよね。それでもって、そこに行きつく過程ってモノが先物取引のダイゴミであって、だからそこらへんをユミちゃんにはきっちりとわかってもらいなぁとオサダくんは考えているわけですが…。

マチダ先生 ユミちゃんのやる気は十分伝わってきた。さぁ、取引を始めようと言いたいところだけれど、ちょっと待った。ユミちゃんは金ミニ取引を買いから取引を始めるの、それとも売りからかな。この先、金価格が上がると思えば買いから、下がると思えば売りからなんだけれど、そこはどういう風に考えているのかな。
ゆみチャン えと、それはですね…。どうしましょう。てへ?
マチダ先生 そうなるよね。だって、ユミちゃんはさっきまで金先物が東京工業品取引所で取引されているって知らなかったもの。
ゆみチャン そう。そこらへんが未知数だったわけです。それともミステリー?
オサダくん いや、どっちも違う。
マチダ先生 それじゃあオサダくん、キミは金相場の先行きをどのように予想しているかな?
オサダくん はい。基本的には強気です。買いだと思います。理由は大きく3つあります。ひとつ目はいまなお世界金融危機の出口が見えないこと。このため金のセイフヘブンとしての評価が改めて高まってきていることです。
ふたつ目は米ドルに対する円高には限界があると思っていることです。これは自分の意見ではないのですが、今年初め、多くのアナリストは今年の米ドルと円の関係を、1ドルあたり80円から110円程度の範囲で推移すると予想していました。新聞や雑誌、それにインターネットの情報です。実際のところ、年初は89円程度で推移していた為替レートは、2月初めに90円を超えてから急激に円安に傾き始めました。3月になると一時は100円をうかがう場面もありました。その後は3月末にかけては97~98円程度のもみ合い。4月に入るとあらためて100円をうかがう格好です。
それでも今年に入ってから、円は世界の主要通貨に対して大幅な高値となっています。しかし、ぼくは円が過大評価されている気がしてなりません。ここ最近、自動車や電機など日本を代表する輸出メーカーの業績不調が取り沙汰されていますが、まだまだこれからが正念場だろうと思っています。
3つ目はチャートの問題です。東京金の目先の安値を昨年(平成20年)10月下旬の2104円(1グラムあたり)とすると、これに呼応するのはニューヨーク(NY)相場だと10月24日の681ドル(1トロイオンスあたり)です。しかしその後NY金相場は堅調に推移し、2月20日にはほぼ1年ぶりに史上最高値の1000ドルを回復しました。さらにそののちには870ドル付近まで値を崩しましたが、それ以上には下がっていません。しばらくは900ドルと1000ドルの間で推移するのではないでしょうか。900ドルに近い水準のいまは買いが有利だと考えます。


NY金 当限つなぎ
ゆみチャン せ、先輩がアタマ良く見えるパート2…。てか、聞いたことのない言葉の羅列ですぅ。初めてパソコンを買いに行った時の店員さんの説明みたい。どうしたらいいんでしょうか、センセ?
マチダ先生 オサダくんのいまの指摘はとても理にかなったものだ。いいぞ。しかしユミちゃんだって、これから金の先物取引について真剣に勉強すれば自然に身についてくる知識でもある。そこは心配しなくても大丈夫。オサダくんのいいところは基本を押さえた上で人の意見や新聞・雑誌・インターネットで得られる情報を摂取・整理して、自分なりに分析しているところさ。ユミちゃんはいまオサダくんが話した中で、どこら辺が理解できなかったかな?
ゆみチャン え~まずは政府がなんとか…。もしかして、あそうソーリ?
オサダくん ちが~う。違います。
ゆみチャン なんで2回言うの(怒)!
オサダくん セイフヘブンというのは直訳すれば「安全な天国」くらいのイミ。その前に「金融危機」って言ったじゃない。ほら、米国でサブプライムローン問題が持ち上がってから、住宅金融公庫をはじめとして世界有数の証券会社や銀行、保険会社がつぶれちゃったり政府の管理下に入ったりしたじゃない?
ゆみチャン したんですか?
オサダくん したの! それ以降は銀行と銀行の資金の貸し借りやその他の金融機関を巻き込んだ債券の売買なんかができなくなっちゃったんだ。相手が倒産するかも知れないって、お互いがお互いを信用できなくってね。信用収縮とか言われてるけどさ。それが世界に広がったの。
その一方で投資家――って言ってもボクやユミちゃんとはケタが違う投資家なんだけどさ――が投資資金を引き揚げ始めた。わかりやすい言い方をすると、持っていた株や債券を売っちゃたとかそんなことだけどね。だから株価は下がるわ、会社は経営が難しくなるわで、もーたいへん。個人レベルでは給料が下がったり、それどころか会社をやめさせられちゃったり。それでもっていまの不景気ですよ。全体的にとらえて世界金融危機なんて呼んでますけどね。
ゆみチャン な~る。
オサダくん それとは別に、2008年は原油が1バレルあたり150ドルになったりしたじゃない。日本ではガソリンがリッター200円とか。
ゆみチャン テレビでやってました。その時、とうもろこしもお高くなったんですよね。
オサダくん そうそう。でもあの時の商品相場のイケイケ状態は、いまになって落ち着いて考えてみると完全にバブル症状だったよね。それが世界金融危機のぼっ発とともに吹き飛んじゃった。日本のバブル崩壊の影響をずっと上回るすさまじさ。
ゆみチャン どっ、どきっ。
オサダくん あとで世界の主要株式市場の平均値段の推移なんかを調べてみてね。で、なんだ。そうした場合、みんなは持っているおカネをどうするか。

ダウ平均株価 大証225先物
ゆみチャン えと、株が下がっちゃうんじゃ早く現金に換えないといけないですよね。でも銀行に預けておいても低金利です。それに一番イヤなのは経済がめちゃめちゃになって物価が上がっちゃうこと。それはおカネの価値が下がっちゃうってこと? そんなのイヤ。ぜったい許せない。どうしたらいいんですかぁ~。めそめそ。
オサダくん でしょ。で、そういう場合、多くのヒトは金を買うの。
ゆみチャン 金? ゴールドってことですね。
オサダくん そう。なんでかっていうと、人類は有史以来、金を特別な金属だと考えているからなのさ。ピラミッドの中からも日本の古墳からも高貴な方々の埋葬品・副葬品として金が見つかっている。
ゆみチャン あたしのおじさん、金歯をぞろぞろいれてます。
オサダくん 獅子舞みたいでいいねぇ。ってそういうことじゃなくて、だから金の価値は普遍的なものだってコト。典型的なパターンでは戦争の時がそうなんだけれど、紙のおカネの信用力が低下しそうな場合には、資産を現金で保管するよりも金に換えておいた方が間違いないって思っているヒトが世界中にはたくさんいるってことなの。だから金はセイフヘブンとかラストリゾート(最終避難地)なんて言われるのさ。別の言い方では「有事の金」なんてのもあるんだよ。今回の世界金融危機も間違いなく「有事」だよね。だからボクは強気ってこと。
マチダ先生 すばらしい解説だねぇ。
オサダくん 先生、ありがとうございます。
マチダ先生 ただし、それで相場に勝てるかどうかは別問題。
オサダくん にゃんと!?
マチダ先生 じゃぁユミちゃん、いまのオサダくんのハナシを聞いて買うか売るか、さあ、どっち?
ゆみチャン 売ります!
オサダくん なんでさぁ~(悲)。しかもキッパリと。
ゆみチャン だって相場はずしの名人が買いだって言うなら、それは売りってことですよね。
マチダ先生 よし。それじゃぁユミちゃんは売りから始めよう。
オサダくん 先生も「よしっ」て簡単にかたずけないでくださいよぉ~(涙)。
マチダ先生 いや、重要なのはユミちゃんが情報を得て自分で売買の判断をしたってことさ。その情報とはオサダくんの相場分析。つまり塩漬け名人のキャリアを尊重したってことじゃないか。
オサダくん それはよろこんでいいんでしょうか?
マチダ先生 もちろん。じゃあ、明日からはペーパー取引を始めるよ。ユミちゃんはパソコンを用意してきてね。
ゆみチャン はい、わかりました。あ、なんだかわくわくです。

*本稿における登場人物の会話は、実際の相場の値動きを保証するものではありません。




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