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第四講 商品さきもの市場の利用者

1. 市場利用者の目的
商品さきもの市場は
どんな人が利用しているの?

いろいろな人たちが、様々な目的で利用しているよ。一番多いのは、「資産運用(投機)」で利用する人たち、つまり投資家だね。そのほかには、例えば、モノを生産したり販売したりする人たちが、商品さきもの市場でモノを売ったり、仕入れたり、あるいは価格変動リスクをヘッジしたりするために利用しているんだ。

どんな人たちがどんな目的で利用しているかを、図でみてみよう。


図1【市場利用者の主な利用目的】
図1
※1 「リスクヘッジ」及び「モノの調達・換金(受渡し)」に関する参加者は、日本商品先物振興協会が行った「当業的利用アンケート」(平成19年2月)及び「当業者受託に係るアンケート調査」(平成20年10月)に基づいて作成しています。
※2 当業者:モノの生産、購入、加工、流通、販売、消費等に関する事業を行っている者をいいます。

商品さきもの市場の利用目的は「リスクヘッジ」、「モノの調達・売却(受渡し)」、「資産運用(投機)」の3つに大別されるということですね。

その通り。でも、第二講でも触れたけど、モノの調達・売却(受渡し)は日本の市場では市場全体の取引枚数の1%以下で、実際には差金決済取引*が大多数を占めている。また、リスクヘッジ目的の取引も、資産運用目的の取引と比べるとまだまだシェアが少ないのが現状なんだ。

取引所がその重要な使命の一つである公正な価格形成機能を果たすためには、様々な利用目的を持った多くの人たちがバランスよく商品さきもの市場に参加することが必要不可欠だね。そういう意味では、日本の商品さきもの市場は今まで以上にもっといろいろな人たちに利用してもらえるようにしていかなければいけないね。

なるほど。ところでリスクヘッジをする市場利用者の欄に金融機関とありますが、これはどういうことですか。

金融機関は、その業務の一つとして、あらかじめ決められた価格でモノを売買することを保証するなど価格変動リスクをカバーすることのできる金融商品を作って、一般の会社(例えば、穀物や貴金属、石油などを扱う非金融分野の会社)に販売しているんだよ。一般の会社はこの金融商品を購入することで、高い価格でモノを仕入れなければならない、または安い価格でモノを販売しなければならないというリスク(危険)から逃れることができるけど、その金融商品を提供する金融機関は自らリスクを負担することになる。そこで、そのリスクを商品先物取引によって第三者に移転するために市場を利用する場合があるんだ。

一般の会社は金融商品を買うだけでリスクヘッジができるなら、本来の業務に専念できて便利ですね。

一般の会社が商品さきもの市場を利用しなくても、金融機関が市場で取引すれば市場の流動性は高まるわけだから、市場の価格形成機能も強化されることになる。だから、他の市場利用者にとっても望ましいことだといえるだろうね。


図2【金融機関によるヘッジ取引(イメージ)】
図2


2. 市場で取引できる人

商品さきもの市場では誰でも取引ができるのですか。


商品さきもの市場での取引は誰でも(※3)行うことはできるけれど、自分自身で「直接」、市場で取引することができるのは、取引所の「会員」(会員制の商品取引所の場合)とか「取引参加者」(株式会社組織の商品取引所の場合)という、取引所の資格を持っている者しかできないんだ。じゃ、その資格を持っていない人はどうするか。そういう人たちは、他人の取引注文を受けることのできる「商品取引員」という会社を通じて取引するというルールになっているんだよ。

※3 商品取引所法では取引に関する知識・経験・財産の状況等の観点から取引適格性を有する者だけが取引に参加できる「適合性の原則」が定められており、未成年者や禁治産者などの不適格者は取引ができません。

「商品取引員」って、株取引の証券会社と似ていますね。

そうだね。厳密にいえば、その業務内容は全く同じというわけではないけれど、一般の人の売買注文を市場につなぐという役割は同じだね。法律上の資格(※4)を持っていないとできない点も似ているよ。

※4 商品取引員は商品取引所法で主務大臣の許可が必要とされ、証券会社(金融商品取引業者)は金融商品取引法で主務大臣への登録が必要とされています。

商品取引所で直接、取引のできる「会員」や「取引参加者」は、みんな「商品取引員」の資格を持っているのですか。

必ずしもそうではないんだ。図で説明しよう。


図3
図3

まず、商品取引所のところをみてごらん。さっき、商品取引所のさきもの市場で直接取引できるのは、「会員」あるいは「取引参加者」として取引資格をもっていないとできないと言ったけど、これからは便宜的にこの2つを合わせて「会員」という言い方で説明するよ。
この商品取引所の「会員」は2つに区分することができるんだ。
1つは、Aの「商品取引員」の許可を受けていない会員で、「市場会員」、「市場取引参加者」といった取引所の資格を持っている人たちだ。この人たちは他人から取引の委託を受けずに、「自己取引」という、自分の取引だけを行うんだ。
もう1つは、Bの「商品取引員」の許可を受けている会員で、こちらは「受託会員」とか「受託取引参加者」という取引所の資格を持っていて、自分の取引もできるけれど、他の人たちの委託を受けて、その人たちの取引をさきもの市場でやってあげることができるんだよ。こういう取引のことを「委託取引」と呼んでいるんだ。
さて、もう1つ、Cと書いてある人たちがいるよね。この人たちは商品取引所の「会員」ではないんだけど、「商品取引員」の許可は受けている人たちなんだ。

じゃ、他の人の注文は受けることができるんだね。だけど、取引所の会員ではないから、商品取引所での取引はできないでしょ。受けた注文はどうするの?

そうだね。Cの人たちは他の人から注文を受けても、自分では商品取引所で取引ができないから、代わって取引してくれる人に頼まなくてはならないよね。だからCは、「商品取引員」の許可と商品取引所の取引資格の両方を持っているBの「受託会員」に他の人の注文を「取り次ぐ」んだ。そのためCは一般に「取次取引員」などと呼ばれているんだよ。

商品取引所の取引資格がなくても、「商品取引員」の許可を受けることができるんですか。

できるよ。商品取引所で直接、取引のできる「会員」の資格と、他の人の取引の委託を受けることのできる「商品取引員」の資格は、それぞれ別の要件が決められているんだ。
商品取引所の「会員」になるには、商品取引所法では、①その取引所に上場されている商品や原材料の売買や生産、加工などを業として取扱っているか、②商品取引員であること、などが必要とされていて、これに加えて、商品取引所が、一定額以上の財産を保有していて、加入金等を払い込む、などの加入の条件を定めている。ただ、「商品取引員」と違って、主務大臣の許可は必要ないし、会社等の法人でなくてもなれるんだよ。

じゃ、「商品取引員」の資格は?

「商品取引員」は、他人から取引の委託を受けるので、そのときに取引に必要な資金を預かったり、受けた取引注文を間違いのないように取引所で執行する、ということが大事だね。だから、商品取引所の会員よりも高い財務要件が課されていたり、株式会社でなければならないといったことが条件となっていて、主務大臣の許可が必要なんだ。だけど、取引所の「会員」である必要はないんだよ。

「商品取引員」は商品さきもの市場でどのような役割をになっているの?

商品取引所の使命は公正な価格形成だから、より多くの人が市場に参加することが望ましいよね。でも取引所で直接取引できるのは取引所の会員だけなので、この人たちだけで公正な価格を形成することには限界がある。だから会員以外のより多くの人に取引に参加してもらうことが大切だよね。

そのために「商品取引員」という市場外と市場内を結びつける役割を果たす人が必要だということですね。

そうなんだ。商品取引員は市場外と市場内の橋渡しをすることで行われた委託取引は、数年前よりは減ったけど、平成20年度では市場全体の5割強。商品取引員自らの取引である自己取引を含めると市場全体の約7割にもなるんだ。従って残りの3割は商品取引員資格を持たない取引所会員の自己取引ということになるね。

「商品取引員」という名称は、平成21年の法律改正により「商品先物取引業者」という名称に改められる予定です。

商品取引員の市場シェアって大きいんですね。商品さきもの市場別の売買枚数はどうやって知ることができるのですか。

図4
図4
取引所会員の売買状況は取引所から毎月発表されているんだ。
また、各取引所の事業報告書には銘柄別の自己・委託取引の枚数も掲載されているよ。これらの情報は取引所のホームページで発表されているから、誰でも見ることができる。ほかにも取引所のホームページにはいろいろな情報が掲載されているからここで紹介しておこうね。

東京穀物商品取引所 http://www.tge.or.jp/japanese/index.shtml
東京工業品取引所 http://www.tocom.or.jp/jp/index.html
中部大阪商品取引所 http://www.c-com.or.jp/public_html/index/index.php
関西商品取引所 http://www.kanex.or.jp/

いずれにせよ、市場には、様々な立場の人が、いろいろな目的で参加しているということを知っておくことが重要で、そうすれば商品先物取引への理解が深まるよ。


分かりました。もう少し勉強してみます。