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キソのキソを教えてください

先物取引は証拠金取引なんです
 商品先物取引の勉強は実践あるのみ。っていってもやっぱりイキナリはキツイなぁ。だから最初はペーパー取引をするのさ。ふふん、アタシってばゴールドが似合うオンナなのってユミちゃんはとうもろこしから突然の乗り換えで、取引が始まってもいないのにゴージャス気分。でも金先物にはミニ取引があるし、初心者には向いているとも思われるわけで。でもその前にもうちょっとお勉強しなくちゃです。
ゆみチャン センセ、アタシひと晩考えたんですけれど、やっぱりペーパー取引といってもリアリティが必要ですよね。だから、けさ銀行にいって26万円おろしてきたんです。センセに預かってもらおうと思って。
マチダ先生 なるほど。やる気まんまんだねぇ。でも実際に金ミニ取引をするのには26万円も必要ないんだよ。
ゆみチャン え、なんで。おまけしてくれるんですか?
マチダ先生 ちがうちがう。先物取引はFX取引と同じで証拠金取引だからさ。
ゆみチャン 先物取引は証拠金取引、FX取引も証拠金取引…。うどんもスパゲッティも麺類みたいな分類ですか?
マチダ先生 そうそう。いいカンジ。オサダくんはこれを説明できるかな。
オサダくん え~と、まず先物取引で100グラムの金を買っても、その場でゴールドバー(金ののべ板)がもらえれるわけじゃないってことです。売り手は将来のいつかに渡す、買い手はその逆で引き取る約束の取引があるって説明したよね。
ゆみチャン あ、とうもろこしの説明で教えてもらいました。

オサダくん それと先物取引と先渡し取引の違い。先物取引は将来のいつかに現物、金先物取引なら金のバーってことだけど、その現物をやり取りすることも「できる」けど、必ずしなくちゃいけないかというとそうでもない。きのう買った金の先物をきょう売っちゃうこともできる。例えばきのう2600円で買った金先物をきょう2650円で売ったとしようよ。するとユミちゃんはいくら儲かったことになるか計算できる?
ゆみチャン えと、えと。1グラムあたり50円の儲けですよね。それでミニ取引で買ってたとしたら、100グラムだから50円の100倍で5000円の儲け。標準取引なら1キロは1000グラムだから50円の1000倍で5万円の儲け。
マチダ先生 ユミちゃん、ものわかりがいいねぇ。いまユミちゃんが言った「ミニ取引なら100倍」「標準取引なら1000倍」というのはとても重要なポイントだよ。見た目の価格の動きに対して、実際の取引ではいくらの利益や損が出ているのかは常に把握しておかなければならないからね。それを計算するのに必要なのがいま言った「倍率」だ。さっきの取引要綱から倍率を知るには「取引単位÷呼値の単位」を計算してあげればいいんだよ。
オサダくん それじゃあ、いまユミちゃんがアタマの中で計算したことを忘れないうちに書きとめておこう。整理するとこうなる。

★価格の変動と実際の損益の関係は──
(売り価格-買い価格)×取引単位の呼値に対する倍率×枚数で計算する。計算結果がプラスなら利益、マイナスなら損失となる。

●買いから取引を始めたパターン

 (1)取引を買いから始めて値上がりした場合:
【銘柄】 (売り価格 買い価格) 【倍率】 【枚】 【損益】
◆金標準取引: (2650円 ー 2600円) × 1000 × 1 = 5万円
◆金標準取引: (2650円 ー 2600円) × 100 × 1 = 5千円
ゆみチャン そう、そうです。せんぱいっ、アナタは超能力者? あ、そうか。いつもスプーンを持ち歩いているのはそういうわけなんですね。どうもヘンだと思った。ふーん、そうなのかぁ。
オサダくん なにを納得してるの。ぜんぜん超能力使ってないでしょっ。それにスプーン持ってないから。持ってるのはマイ箸だけだよ。で、そんなことはどうでもよくって、次は買った金先物が値下がりしたらどうなるかをシミュレーションするからちゃんと見ててね。

 (2)取引を買いから始めて値下がりした場合:
【銘柄】 (売り価格 買い価格) 【倍率】 【枚】 【損益】
◆金標準取引: (2550円 ー 2600円) × 1000 × 1 = ー5万円
◆金標準取引: (2550円 ー 2600円) × 100 × 1 = ー5千円
ゆみチャン あ、わかる気がする。(2)は金先物を2600円で買ったけど、その後に2550円までお安くなって、でもこれ以上損をしたくないからイヤだけど売りましたトホホってコトですかぁ。
オサダくん そういうこと。それじゃあ、次に取引を売りから始めたらどうなるか。パターンを整理してみよう。ハナシとしては2600円で売ったらその後に2650円になったのが(3)のパターン。2550円になったのが(4)のパターンだよ。

●売りから取引を始めたパターン

 (3)取引を売りから始めて値上がりした場合:
【銘柄】 (売り価格 買い価格) 【倍率】 【枚】 【損益】
◆金標準取引: (2600円 ー 2650円) × 1000 × 1 = ー5万円
◆金標準取引: (2600円 ー 2650円) × 100 × 1 = ー5千円

 (4)取引を売りから始めて値下がりした場合:
【銘柄】 (売り価格 買い価格) 【倍率】 【枚】 【損益】
◆金標準取引: (2600円 ー 2550円) × 1000 × 1 = 5万円
◆金標準取引: (2600円 ー 2550円) × 100 × 1 = 5千円
ゆみチャン わかります。計算の式は全部一緒だし、計算結果がプラスなら儲けでマイナスなら損というのはなんかフツーだし。
オサダくん だね。難しいところはひとつもない。ところでなんだけど、カラ売りした場合、利益になるか損になるかは別にして、買い戻せば取引は完結してしまうよね。
ゆみチャン そういうことになりますねぇ。
オサダくん ということは…。
ゆみチャン ということは…?
オサダくん ほら、現物を持っている必要性ってなかったじゃない。だからゴールドバーを用意する必要なんてないってことにならない?
ゆみチャン あ、そっかぁ。じゃあ買ったヒトだって26万円を用意する必要がないですよね。ということは先物取引の買いって「カラ買い」ですよね。へ~そうなんだ。
オサダくん でしょ。こういう取引の終わり方を「差金決済」というのだけれど、これこそが先物取引の大きな特徴で、先渡し取引や現物取引との違いなんだよね。だからなんだけれど、金先物取引ではミニ取引なら100グラム、標準取引なら1キロのまるまるの代金、これを「総取引代金」というのだけれど、26万円か260万円の一部を預ければ取引できるルールになっているのさ。
ゆみチャン 一部っていくらですか。
オサダくん それは、これからユミちゃんが取引のパートナーに選ぶ商品取引会社が決めることなのだけれど、最低ラインは商品取引所が定めている。平成21年1月7日現在、標準取引なら13万5000円、ミニ取引なら1万8000円。多くの会社はこの最低ラインに合わせているね。
ゆみチャン え~っ! そんなにお安いんですか?
オサダくん そうなんだよねぇ。差金決済で発生する可能性がある損に見合う担保という考え方なんじゃないかな。ちなみにこのおカネは「取引本証拠金」っていうんだ。だから先物取引は証拠金取引。そこがFX取引と同じなんだよね。それで少ないおカネででっかい取引、例えば金標準取引なら13万5000円で260万円ぶんの取引ができることを「証拠金効率がいい」とか「レバレッジが効いている」とかいうんだ。あ、レバレッジっていうのは「てこの作用」のことね。ほら、てこって小さな力で重い品物を持ち上げられるじゃない。あれだよね。
マチダ先生 オサダくん、とても上手な説明だった。見直したな。
ゆみチャン 先輩、ありがとうございました。
マチダ先生 よし、それじゃあペーパー取引をはじめよう。じゃあ、ユミちゃんはいくらを元金にしようか。しつこいようだけれど、損をして生活に支障が出るような金額を設定しちゃだめだよ。
ゆみチャン じゃあ、30万円でお願いします。
マチダ先生 それだけあれば金の標準取引を2枚できる計算だ。けれども元金を証拠金にめいっぱい使うやり方はおすすめしない。オサダくんは「13万5000円で260万円分の取引ができる」って言ったけれど、13万5000円じゃ足りなくなることがあるからね。これについてはあとで詳しく説明するよ。重要なのは、先物取引はいつも資金的な余裕を持ってしなければならないってことだ。
ゆみチャン それなら金ミニでいきます。アタシ、やる気まんまんですっ!



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